犬のてんかん発作で見られる症状は?受診の目安と飼い主ができる備え【獣医師監修】
2026.08.31
愛犬が急に体をこわばらせたり、一点をじっと見つめて動かなくなったりすると、何が起きているのか不安になるものです。
犬のてんかん発作では、全身のけいれんのほかにも、顔や手足の一部がピクピク動くなど、さまざまな症状が見られます。ただし、てんかん以外の原因でも、これらの症状は起こることがあります。動物病院で病名を診断するには発作時の情報が大きな意味を持つため、飼い主がその様子をよく観察し、正確に記録しておくことが役立ちます。
本記事では、犬のてんかん発作で見られることがある症状を紹介し、病院を受診する目安や発作時の対応についても解説します。愛犬の健康を守るためにも、もしもの時の観察ポイントを押さえておきましょう。
犬のてんかんとは

犬のてんかんとは、脳の神経細胞の活動が一時的に過剰になり、発作が起きる病気です。発作の症状は、けいれんなど全身の症状として現れたり、体の一部が動く形で現れたりします。
てんかんと同じような発作は、低血糖や中毒などが原因でも起こります。そのため、発作が一度起きた時点では、すぐにてんかんだと診断できるわけではありません。
動物病院では、診察や検査の結果を総合して原因を調べ、てんかんかどうかを慎重に診断します。専門知識を持った獣医師が十分な情報のもとで検討することで、適切な治療が可能になります。
【チェックリストあり】犬のてんかん発作で見られる症状と前後の変化

犬のてんかん発作では、発作中だけでなく、発作がおさまった後にもさまざまな変化が見られる場合があります。ここでは、発作中に起こる主な症状、発作後の変化、発作が疑われる症状の観察ポイントを紹介します。
発作中に見られる主な症状
発作中には、体全体をのけぞらせる、手足をつっぱらせる、手足が規則的にガクガクと動く、突然倒れるといった、全身の症状が出ることがあります。一方、顔や口元・片方の手足などがピクピクするなど、体の一部にのみ症状が現れる場合もあります。体の一部から始まった症状が、次第に全身の症状へ広がるというケースも見られます。
発作の現れ方には個体差があります。ふっと力が抜けたようになる・落ち着きなく歩き回る・一点を見つめる・空中を噛むような動作をするなどの、発作だとはすぐに気づきにくい症状が出ることもあります。
発作後に見られる主な変化
発作がおさまっても、すぐに普段の状態へ戻らないことがあります。一時的にぼんやりする・ふらつく・腰が抜ける・眠そうにするなどの様子を見せたり、普段より水を飲みたがる・食事を欲しがるという状態になったりする場合もあります。
発作後の状態や普段の状態へ戻るまでの時間は、犬によって違います。数分で落ち着くこともあれば、数日間にわたってぼんやりしていることもあります。
発作が疑われる症状の観察チェックリスト
発作かと思える状態が見られたときは、犬の様子を詳しく記録しておくと、動物病院の受診時に状況を伝えやすくなります。以下の項目は、普段との違いを確認するための目安です。
- 突然倒れたり、全身が硬直したりした
- 全身や手足がバタバタと動いた
- 顔や口元、片方の手足などが繰り返しピクピクと動いた
- 突然動きが止まり、一点を見つめた
- 急によだれが大量に出た
- 同じような症状を繰り返している
- 症状の後に、呼びかけへの反応が普段と違っていた
- 症状の後に、ふらつきや混乱が見られた
- 普段の状態へ戻るまでに時間がかかった
これらの症状があることで、すぐにてんかんだと決まるわけではありません。何の病気による症状なのかは、動物病院で診断を受けることになります。
愛犬が発作を起こしたときの受診の目安

発作が起きたときの緊急度は、発作が続いている時間や繰り返す回数、発作後の回復状態などによって変わります。ここでは、発作が起きたらすみやかに動物病院へ連絡したいケースと、発作がおさまっても相談したいケースを紹介します。
すぐに動物病院へ連絡したいケース
以下のいずれかにあてはまる場合は、緊急性の高い状態と考えられるため、早急に動物病院へ連絡してください。
- 発作が5分以上続いている
- 短時間に複数回の発作が起きている
- 発作後も意識が戻らない
- 発作後も立ち上がれない
- 意識が戻らないまま、次の発作が起きた
- 中毒や誤食の可能性がある
- 発作によってけがをした
また、発作が起きた際には、5分が経過するのを待つだけではなく、犬の安全を確保したうえで動物病院への連絡と受診の準備を進めます。
こうした緊急時にも困らないよう、夜間や休日にも連絡できる救急動物病院をあらかじめ探しておくと安心です。
発作がおさまっても動物病院へ相談したいケース
発作のような症状が短時間でおさまっても、以下のいずれかにあてはまる場合は、早めに動物病院へ相談します。
- 初めて発作のような症状が起きた
- 短時間でおさまったが、原因がわからない
- 同じような症状を何度か繰り返している
- 初めての発作ではなく、以前より発作が長くなった、または症状が強くなった
- 初めての発作ではなく、以前より発作の間隔が狭くなった
- 発作後、普段の状態へ戻るまでに時間がかかる
- 発作時以外にも、ふらつきや反応の変化がある
- 治療中に発作の現れ方が変わった
- 治療中に薬の飲み忘れや、服用後の嘔吐があった
すでにてんかんと診断されていて、通院中の動物病院がある場合は、そこでの指示に従います。
発作が起きたときに飼い主ができること

愛犬が発作を起こしたときは、まず犬と飼い主の安全を確保します。ここでは安全確保のしかたや、発作中に避けた方がよい行動を紹介します。また、発作時に可能であればやっておきたいこととして、記録の残し方についても解説します。
発作中・発作後の安全を確保する
発作中は、犬の意識がなくなり体のコントロールができない場合があります。犬が家具の角などにぶつかったり、階段や段差から転落したりしないよう、すぐに周囲の危険な物を移動させて、安全な空間を確保します。
発作がおさまったら、ぼんやりする・ふらつくなどの状態が落ち着き、犬の反応や歩き方が普段通りの状態へ戻るまで、階段や水場などに近づかないよう見守ります。
発作中に避けたい行動
発作中は、舌を引き出そうとして犬の口に手を入れたり、タオルやスプーン・箸などを噛ませたりしないでください。意識や反応が普段と違う状態にあるので、飼い主が噛まれたり、犬の口の中を傷つけたりする危険があります。
犬の脳に刺激を与えるような行動は取らないようにします。犬を抱き上げる・体を押さえつける・強く揺さぶる・大声で呼ぶなどはひかえておきます。
発作の動画と記録を残す
可能であれば、発作中の様子を動画に残せると、動物病院を受診する際に役立つ情報となります。
まずは犬と飼い主の安全を確保したうえで、犬の全身が映る距離から、体のどの部分が動いているか、呼びかけにどのような反応をしているかなどがわかるように撮影します。撮影のために犬の顔や口元へ近づく必要はありません。
動画とあわせて、次の項目をメモしておくと、受診時に経過を伝えやすくなります。
- 発作が起きた日時
- 発作が続いた時間
- 体のどの部分から症状が始まったか
- 全身に症状が広がったか
- 呼びかけへの反応があったか
- よだれ、排尿、排便の有無
- 発作後に見られた変化
- 普段の状態へ戻るまでの時間
- 過去にも同じ症状があったか
- 飲んでいる薬や持病
動物病院で行う主な検査と治療

てんかん発作のように見える症状は、脳の病気以外の原因から起きている場合もあります。動物病院では、問診や必要な検査を組み合わせながら原因を調べ、診断を行い、治療方針を立てていきます。ここでは、一般的に行われる検査と治療の概要について紹介します。
発作の原因を調べる主な検査
まず問診で、発作が起きた状況・続いた時間・起きた回数・発作前後の様子などを聞き取ります。ほかにも飼い主が撮影した動画などの発作時の記録があれば、実際にどのような症状が起きたのかを把握する材料になります。
身体検査や神経学的検査では、発作が起きていないときの姿勢や体の反応などをもとに、脳や神経のはたらきを確認します。また、脳以外にも発作の原因はないか確認するため、血液検査や尿検査などで、低血糖や肝臓・腎臓の異常がないかを調べます。中毒が疑われる場合には、状況に応じて必要な検査が行われます。
犬の年齢や症状、これまでの検査結果によっては、MRIで脳に病変がないかを確認したり、脳脊髄液(のうせきずいえき)を調べたりする場合もあります。しかしこうした検査によって、てんかんかどうかがすぐに確定するわけではありません。問診を含む複数の情報から、総合的に判断することになります。
必要な検査は犬の状態によって変わり、専門的な設備のある施設で詳しく調べる場合もあります。
てんかんの主な治療方法
治療方法は、発作の原因や症状の重さなどに応じて獣医師が判断します。てんかんと診断された犬では、発作を抑える薬を継続して飲ませる場合がありますが、状態によってはすぐには薬を飲ませないこともあります。てんかんのほかに発作の原因となる病気が見つかった場合は、その病気への治療が必要になることもあります。
治療では、発作を必ず完全になくすことだけを目指すのではなく、発作の回数や強さを抑えながら、犬と飼い主の生活への負担を減らしていきます。
治療で薬を飲ませる場合は、獣医師から指示された量と、飲ませる時間を守って使用します。薬の種類によっては、効果や副作用を確認するために、定期的に受診して血液検査などを行うよう指示されることがあります。薬を飲んでいる間に発作が出たら記録をつけておき、診察時に獣医師へ伝えてください。
副作用が気になる場合も、薬を自己判断でやめたり減らしたりはせず、必ず動物病院へ相談するようにします。
犬や猫のてんかんについて、TCA東京ECO動物海洋専門学校で獣医師として講師をしている羽場先生も以下の動画でわかりやすく解説しています。
【ドギーマン×みやぞん】犬・猫のてんかんってどんな病気?発作が起きた時の対応を徹底解説!
まとめ|正しい知識と観察眼で愛犬の健康を支えよう

犬のてんかん発作は、全身のけいれんのほかに、体の一部の症状として現れることもあります。特に初めての発作の場合は、適切な治療を受けられるように、必ず動物病院へ相談してください。日頃から愛犬の行動や健康状態に気を配り、普段との違いにいち早く気づけるようにしておくと、いざという時も安心です。
愛犬の小さな変化にいち早く気づき、獣医師や病院スタッフと情報を共有できると、治療がスムーズに進みやすくなります。動物の体や病気についての専門知識は、こうした気づきの土台になります。
TCA東京ECO動物海洋専門学校では、「愛玩動物看護師&高度医療専攻」「水族館・動物園看護師専攻」「動物看護師専攻」の3専攻で、動物の健康管理や臨床検査、動物看護などを実践的に学ぶことができます。動物医療や動物看護に関心がある方は、専攻紹介やオープンキャンパスを通して、学ぶ内容や仕事について詳しく調べてみてください。愛犬の健康を守りたい気持ちを糸口に、将来の職業への選択肢が広がるかもしれません。
監修者情報
獣医師 丸田香緒里

Animal Life Partner院長、(一社)往診獣医師協会代表、獣医師。日本大学卒業。動物病院勤務後「人も動物も幸せな生活が送れるためのサポート」をモットーにAnimal Life Partner設立。
獣医中医師、ペット栄養管理士などさまざまな資格を生かし、シニアケアや飼い主の心のケアにより力を入れた往診診療のほか、企業顧問、製品開発など活動は多岐にわたる。
著書:「犬のいる暮らし 一生パートナーでいるために知っておきたいこと」(池田書店)