アザラシの驚異的な潜水能力とは?生態・特徴・豆知識まで解説!
2025.08.01
愛らしい見た目で人気のアザラシですが、その魅力は外見だけではありません。
種類によっては、なんと水深1,500メートル以上の深海まで潜ることができ、1〜2時間以上も水中にとどまれるなど、驚くべき能力をもつ動物なのです。
本記事では、アザラシの分類や身体的な特徴、行動、そして意外な豆知識まで幅広くご紹介します。
普段は知ることのないアザラシの奥深い世界に触れ、その魅力を再発見しましょう。
アザラシとはどんな動物?
首が短くころんとした丸い体つきのアザラシ。一見するとアシカとも似ていますが、どのような特徴をもった動物なのでしょうか?
ここでは、アザラシの分類や学名、アシカとの違いについてわかりやすく紹介します。
分類と学名|海に適応した哺乳類
アザラシはネコ目アザラシ科に分類される海棲哺乳類で、学名はPhocidaeです。
また、アシカやセイウチと共に「鰭脚類(ききゃくるい)」というグループに属します。鰭脚類とは、ヒレのような脚(あし)を持ち、海で生活する哺乳類のことです。
アザラシ科に属するのは19種。北海道沿岸に生息するゴマフアザラシやゼニガタアザラシなどは、日本近海の代表的なアザラシです。
アシカとの違いは?
アザラシとアシカは見た目がよく似ていますが、耳の形や動き方などに明確な違いがあります。
まず、アザラシには耳介(耳たぶ)がなく、小さな耳の穴しかありません。一方、アシカには耳介がはっきりと見られます。
また、泳ぎ方や陸上での動き方も、アザラシとアシカを見分ける際のポイントです。
アザラシは体全体と後ろあしを使って泳ぎ、陸上では這うように動きます。対して、アシカは前あしを広げて泳ぎ、陸上でも体を起こして歩くのが特徴です。
アザラシの身体的特徴
海に生息するアザラシは、一生のほとんどを水中で過ごします。そのため、体のつくりも水中での生活に適したさまざまな特徴があります。
ここからは、アザラシの身体的特徴について見ていきましょう。
1時間以上も潜れる?アザラシの驚異的な潜水時間
種類によって差はあるものの、アザラシは長時間かつ深く潜ることができる、高い潜水能力を持った動物です。
なかには、1,700メートルもの深さまで潜れる種類もいます。また、潜水が得意だといわれる「ゾウアザラシ」だと、1〜2時間ほど水中にとどまることも可能です。
アザラシが長時間水中に潜っていられるのは、その身体的特徴によるものです。
アザラシの体は、酸素を長く蓄えることができるうえに、泳いでいる間もできるだけ酸素を使わないようにできています。
その特徴のひとつが、「ミオグロビン」というたんぱく質を多く持っていることです。ミオグロビンは筋肉中に多く含まれ、酸素を効率よく蓄える働きをしています。
アザラシは、陸上で暮らす哺乳類と比べてこのミオグロビンを豊富にもっているため、たくさんの酸素を蓄えて、長時間泳ぎ続けられるのです。
さらにアザラシは、水中に潜っている間、血液を脳や心臓など特に大切な器官だけに送るようにして、ほかの器官への血液量を抑えています。そして、心臓の動きを少なくしたり、体温を低くしたりするなど、できるだけ酸素を使わないようにしているのです。
深海の水圧に負けない体のひみつ
アザラシが深い海に潜れるのは、鼻や肺の構造に秘密があるからです。
水中で暮らす多くの動物と同様に、アザラシも鼻の穴(鼻腔)を自由に開閉できる仕組みを持っています。 泳いでいるあいだは鼻腔を閉じて、肺に水が入るのを防いでいるのです。
さらに、潜水時には肺の中の空気をほとんど吐き出すのが特徴です。あらかじめ空気を減らすことで、肺が水圧による圧迫に耐えられるようになっています。
このような体の仕組みのおかげで、アザラシは深い海でも安心して活動できるのです。
暗い海でも安心!発達したひげ
アザラシのひげは「感覚毛」と呼ばれるとても敏感な感覚器官で、暗い海でエサを獲るのに役立っています。
ひげの毛根のまわりには多くの神経が集中しており、水中で生じるわずかな振動も捉えることができます。
特に、視界が限られる暗い海の中では、アザラシはこのひげを使ってエサとなる魚の動きや位置を感じ取り、獲物を捕らえているのです。
アザラシの行動と生態
アザラシは、かわいらしい見た目からは想像できないハンターとしての一面や、ユニークな生態をもつ動物です。
ここでは、アザラシが何を食べているのか、そしてどのように子育てをしているのかをご紹介します。
アザラシは何を食べている?意外なハンターの素顔
アザラシは、主に魚を食べる肉食性の哺乳類です。ニシンやカレイといった魚のほか、イカやエビなどを食べることもあります。
しかし、種類によっては意外な一面を見せることもあります。
たとえば、ヒョウアザラシなどの大型種になると、その獲物は魚介類にとどまりません。 なんと、ペンギンや他のアザラシまでも捕食対象とすることがあるのです。
かわいい顔からは想像できない、アザラシの肉食な食生活に驚く人もいるのではないでしょうか。
アザラシの子育て方法
アザラシの出産は陸上や海氷の上でおこなわれ、一度に生まれるのは1頭の子どもです。母親は出産場所にとどまり、数週間にわたって授乳をしながら子どもの成長を見守ります。
授乳期間はおよそ2〜3週間で、その間に子どもはふさふさの毛が生えそろい、大人のアザラシとよく似た姿になります。
また、アザラシは繁殖後に母親同士で助け合うこともあり、高い社会性をもっている動物でもあるのです。
ただし、アザラシの繁殖形態は、種類によっても異なります。たとえば、多くのアザラシは一夫一妻ですが、キタゾウアザラシやミナミゾウアザラシのように一夫多妻で繁殖する種類も存在します。
アザラシの豆知識で魅力を深掘り!
ころんとした見た目が愛らしいアザラシですが、実はそのほかにもユニークで興味深い特徴がたくさんあります。
ここでは、そんなアザラシの魅力をもっと知ることができる豆知識をご紹介します。
水中の達人でも陸上はちょっと苦手
アザラシは一生のほとんどを水中で過ごすため、泳ぐのがとても得意な動物です。
しかし、そんな水中の達人であるアザラシも、陸上での移動は得意ではありません。水中ではしなやかに速く動ける一方、陸上では体をくねらせるようにして進むため、俊敏な動きはあまり得意ではありません。
このように、水中と陸上で全く異なる姿を見せるのは、アザラシのユニークな一面だといえるでしょう。
寒い海でも平気な理由
アザラシの丸い体型は、実は寒い海で泳ぐのにとても役立っています。
アザラシは北極や南極といった寒い海にも生息していますが、そのような環境でも平気でいられるのは、体を覆う分厚い脂肪のおかげです。
この脂肪層は、いわば天然の断熱材。体内の熱を逃がさず、冷たい水の中でも体温をしっかりと維持する役割を果たしています。種類によっては、体重の約半分が皮膚と脂肪で占められていることもあります。
アザラシは、この分厚い脂肪のおかげで、過酷な環境でも快適に暮らすことができているのです。
好奇心旺盛で遊び好き
アザラシはとても好奇心旺盛で、遊ぶことが大好きな動物です。
水族館では、人に興味を持って近づいてくる姿が見られることもあります。また、仲間同士でじゃれ合う姿もよく見られます。そんな愛くるしい姿も、多くの人々を魅了してやまない理由のひとつです。
まとめ|驚くほど多彩な能力をもつアザラシの魅力を知ろう
アザラシは、水中での高い運動能力や深海への適応力、発達した感覚器官など、見た目からは想像できないほど多彩な能力を備えた生き物です。
さらに、遊び心や仲間との関わりといった社会的な側面もあわせ持ち、その魅力は知れば知るほど広がっていきます。ただ「かわいい」だけではないアザラシの奥深い世界に、これからもぜひ注目してみてください。