
狩りをして、鳥獣を捕獲している猟師。ときには仕事として鳥獣の捕獲を依頼されることもあります。
山から下りてきた動物が町中を走り回ったり農作物を荒らしたりするニュースを見ると、「早く捕まえて欲しい」と感じる人もいるでしょう。
身近に農業を営んでいる人がいる方は、自分で捕まえたいと考えたりする方もいるかもしれません。
最近では、猟師が捕獲するジビエ(野生鳥獣の肉)に心惹かれる人もいるのではないでしょうか。ですが、猟師になりたいと思っても、どうすれば猟師になれるか分からない人もいるでしょう。
この記事では、動物の生態や行動などが学べるTCA東京ECO動物海洋専門学校が、猟師になるのに必要な資格や知識、将来性など気になる情報を1つずつ説明します。
人助けや自然保護、ジビエに興味や関心がある人は、ぜひ最後まで読んでみてください。
記事の概要
猟師とは

猟師とは、山で猪や鹿などの鳥獣を狩る人をいいます。猟師といっても、すべての人が狩猟を仕事としているわけではありません。趣味で行っている人もいます。
なかには、狩った鳥獣の角や皮などを装飾品に加工して販売したり、鳥獣の肉を料理店や食肉加工会社に買い取ってもらったりして収入を得る人もいます。
猟師は鳥獣を狩るのが目的のため、良い印象を受けづらいかもしれません。
ですが、町に出没した猪や鹿などの鳥獣から農作物や人々を守り、私たちの生活を守っているのも猟師です。
鳥獣が増えすぎると、木の葉を食べたり樹皮を剥いだりする被害が拡大していきます。すると、森林は育たず土壌は荒れ、自然の生態系が崩れる原因にもなりかねません。
猟師は、増えすぎた鳥獣の数を管理して土壌や森林などを守る仕事も担っています。
猟師になるには資格は必要!有利な資格や条件、年齢制限はある?

猟師になるには狩猟免許が必要です。年齢制限があり、更新手続きも必要です。
必要な資格や持っていると有利な資格は以下の4つです。
- 狩猟免許
- 普通自動車免許
- 無線免許
- 食品衛生責任者
1つずつ順番に説明していきますので、参考にしてください。
①狩猟免許は4種類
免許の種類 (更新は3年ごと) |
狩猟スタイル (必要な道具) |
①第一種銃猟免許 ※20歳以上から取得可能 |
・装薬銃 ※空気銃、圧縮ガス銃も使用可 |
②第二種銃猟免許 ※20歳以上から取得可能 |
・空気銃 ・圧縮ガス銃 |
③網銃免許 ※18歳以上から取得可能 |
・網 ※むそう網、はり網、つき網、なげ網など |
④わな猟免許 ※18歳以上から取得可能 |
・わな ※はこわな、囲いわな、くくりわななど |
狩猟免許は4種類あり、種類により狩猟スタイルが変わります。また、必要な手続きや猟具も異なります。
狩猟免許は人を傷つける恐れのある免許のため、取得条件が厳しく定められています。
たとえば、精神障害や統合失調症などで通院歴がある場合は、狩猟免許取得の申請は行えません。狩猟を適正に行うことに、支障を及ぼす恐れがあるからです。
ですが、適正な判断が下せる人ならば、視力や聴力が悪くても矯正したり補正したりすれば適性試験を通過できます。諦めずチャレンジしましょう。
複数の免許を同日にまとめて受験することも可能ですので、狩猟スタイルを考えて免許を取得するとよいでしょう。
②普通自動車免許

狩猟をする場合、山道の移動や狩った動物を運ぶのに自動車が必要です。求人にも自動車免許の取得が条件に含まれていることがほとんどです。
自動車の使い道は、山道の移動や動物を運ぶだけではありません。
狩猟で使用するわなや銃などの猟具を持って公共交通機関を利用すると、軽犯罪法や銃刀法違反に該当する場合があります。
法に触れず、いつでも狩猟に必要な道具を持って移動できるよう、普通自動車免許を取得しておきましょう。
③無線免許

猟師は、第4級アマチュア無線技士の免許を取得しておくとよいでしょう。無線は山林や森など、携帯電話の電波が届かない場所で複数人で狩猟を行う場合に役立ちます。
無線が使えると、仲間の位置がわかったり鳥獣を四方から囲い込んだりしやすくなり、狩猟が効率的に行えます。
第4級アマチュア無線技士の免許取得は簡単。日本アマチュア無線振興会の講習を2日間受けると取得できます。
毎回、単独で狩猟をする場合は不要かもしれませんが、複数人で行動する可能性がある人は無線免許を取得しておくとよいでしょう。
参考:日本アマチュア無線振興会
④食品衛生責任者

食品衛生責任者の資格を取得していると、食肉処理業を行うことができます。
食肉処理業は、保健所の許可が降りると特定の店舗で鳥獣を解体したり施設内で販売したりできる事業です。
たとえば、ぼたん鍋(鳥獣:猪の肉)を飲食店で提供する場合は、飲食店に食品衛生責任者の資格保持者が在籍していなければなりません。
資格取得後は更新不要ですが、自治体によっては一定期間後に講習や研修が必要な場合もあります。
食品衛生責任者の資格は、6時間の座学とテストのみで得ることができます。飲食店の運営も視野に入れている場合は、取得を検討してみるとよいでしょう。
参考:食品衛生責任者養成講習会
猟師になるのに必要な費用や道具

猟師になるのに必要な費用は以下です。
- 第一種・第二種銃猟免許:11万円ほど
- 網銃・わな猟免許:3万円ほど
※猟具は含めません
猟師に必要な手続きと費用の詳細は、以下の表を参考にしてください。
必要な手続き | 費用 |
狩猟免許受験手数料 ※1免許ごと |
・5,200円 ※診断書 2,000円 ※写真代 700円 |
・銃砲等講習会(初心者)受講申し込み ・教習資格認定申請 ・射撃教習 ・銃砲所持許可申請 ・猟銃用火薬類等譲受許可申請 ※銃猟免許のみ |
・67,950円 ※診断書・写真代・テキスト・住民票・身分証明書など |
狩猟者登録 ※複数県で狩猟をする場合は、県ごとに申請が必要 |
・1,800円 |
狩猟税 | 第一種銃猟 ・16,500円 第二種銃猟 ・5,500円 網銃免許・わな猟免許 ・5,200円 |
その他 ・猟友会 ・ハンター保険 ・認知機能検査など |
・15,650円 |
※各都道府県により、金額は異なります
参考:長野県警察
参考:長野県警察
参考:長野県営総合射撃場
参考:長野県庁
4種類ある狩猟免許はそれぞれ必要な猟具が異なるため、手続きや費用も変わります。
たとえば、第一種銃猟免許と第二種銃猟免許は、銃や弾を保管する金庫が必要です。保管する金庫は、銃用は2万円ほど、弾用は1万円ほどの商品を使用することが義務づけられています。
また、銃と弾は別の部屋で保管する決まりもあります。
自宅に保管場所が確保できない場合は、銃砲店や射撃場で銃や弾の預かりサービスを利用するのもよいでしょう。
※参考:実録 狩猟読本 銃砲所持許可と狩猟免許の取得
道具とは異なりますが、狩猟犬を従え、狩猟にいく人もいます。
狩猟犬のしつけは専門家に任せる人や自分で行う人などさまざまですが、狩猟する際に必要な行動などを自分でしつけられると狩猟もしやすくなるでしょう。
狩猟免許を取得するなら猟友会に登録するのがおすすめ

第一種銃猟免許を取得する場合は、全国にある猟友会に登録するのがおすすめです。猟友会では、第一種銃猟免許の取得に必要な銃の分解や組み立てなどの対策ができる試験対策講習会が開催されています。
今まで銃を扱ったことがない人にとって、銃の分解や組み立ては未知のもの。猟友会では、試験対象にもなっている銃の扱い方や鳥獣の知識をしっかりと教えてくれます。
猟師をする上で、鳥獣の行動や見分けるコツを知るのはとても大切です。間違えて狩ると違法になるため、しっかりと鳥獣について勉強しましょう。
猟友会に登録するメリットは、免許取得前の講習だけではありません。
毎年必要な都道府県の会員登録の代行依頼ができたり、猟師に必須な3,000万円以上の損害賠償保険に相当するハンター保険に加入できたりします。
参考:環境省
都道府県が鳥獣駆除の依頼をするのも、猟友会が多いです。 先輩猟師が多く在籍している猟友会で活動を行い、知識や技術などを磨き、人脈を作るとよいでしょう。
猟師になる方法

猟師になるには、動物の生態や見分け方を知ることが大切です。動物の出没しそうな場所や行動などを知っていると、狩猟の効率があがります。
動物の知識を効率よく勉強するには、以下の2つの方法があります。
- 専門学校に通う
- 大学に通う
それぞれの特徴を、順番に説明していきます。
専門学校に通う
猟師を目指す場合は、自然や野生動物に関する勉強ができる専門学校がおすすめです。
TCA東京ECO動物海洋専門学校「野生動物保護専攻」では、動物の生態や行動、鳥獣被害の対策方法など、幅広い知識が学べる鳥獣管理士の資格が取得可能です。
また、実技では山の中で動物の糞や足跡を探したり、鳥類の特性を学んだりできます。足跡がついたおおよその時間が分かれば近くに目的の動物がいるか推測でき、毎日の狩猟に役立ちます。
猟師は、定められている鳥獣以外を狩ると法律違反になるため、知識や技術がより深く学べる専門学校がおすすめです。
大学に通う
大学に通う場合は、農業大学や生物環境科のある大学などがおすすめです。
大学によっては狩猟サークルが設立されていることもあり、実際にわな猟をして活動しているサークルもあります。
また、農作物や自然環境などが鳥獣被害と深く関わっていることも分かっているため、講義でわな設置体験を行ったり、専門家の話が聞けたりすることもあります。
大学は専門学校に比べて鳥獣の生態や扱い方など、知識を得たり技術を習得したりするのが難しい部分もあるでしょう。ですが、自分が興味のあることをより深く勉強できる場でもあるため、多くのことを学び、将来を考えるにはよい環境と言えるでしょう。
大学と専門学校でお悩みの方はこちらの記事も参考にしてください。
関連記事:大学と専門学校どっちがいいの?
猟師の仕事内容は?仕事は1年中ある?

猟師は、趣味で狩りをする人もいれば仕事として鳥獣駆除をする人もいます。
狩猟が許可されている鳥獣は、48種類(鳥類:28種類、獣類:20種類)。日本に生息する野生鳥獣700種類のうちの、ごく一部です。
参考:環境省
狩猟期間は、毎年11/15~2/15(北海道のみ10/1~1/31)までと法律で定められています。
ですが、鳥獣が原因で農作物や自然生態系の被害が大きい都道府県では、定められた期間以外でも狩猟が許可されている場合があります。
都道府県によっては1年中猟師の仕事ができる場合もあるため、狩猟者登録をしている都道府県に確認が必要です。
猟師は、報奨金がもらえる鳥獣駆除を仕事の1つにするのもよいでしょう。
猟師は覚悟が大事!覚悟以上のやりがいはある?

猟師は、覚悟を持って行わなければいけない仕事です。
猟師は動物を狩る仕事。理解が得られない人からは、異色の目で見られることもあります。
狩猟免許の取得を申請した場合、警察が申請者の身辺調査を行います。妻や恋人、近所の人などにも話を聞くため、動物を狩ることに対して周りの理解が必要です。
猟師は、なりたいと思ってもすぐになれる仕事ではありません。銃を所持する場合は、許可や管理も必要です。猟具を扱ったり鳥獣を相手にしたりするため、大けがをする恐れもあります。周りの視線やけがなどを考えると、猟師になるのをためらう人もいるかもしれません。
ですが、狩猟に対して周りの理解が得られれば、猟師はやりがいがあります。
狩猟免許を持たない自衛隊や警察官は、銃を所持していても鳥獣駆除の資格がありません。
鳥獣で困っている農家や町の人たちを助けることができるのは、猟師だからです。
鳥獣が増えすぎないよう、自然の生態系を守っているのも猟師の仕事の1つ。加えて、天然のジビエ料理が味わえるのも、猟師の醍醐味です。 猟師は覚悟も大事ですが、周りの理解と協力があれば、とてもやりがいのある仕事です。
猟師に向いている人

猟師に向いている人を、以下にいくつかピックアップしました。
- 感情をコントロールできる人
- リサーチ力がある人
- 体力がある人
- 手先が器用な人
- 集中力がある人
- 判断力がある人
猟師は、銃を扱うこともあるため、自分の感情をコントロールし、冷静さを保てることが大切です。
また、鳥獣が出没しやすい場所を把握し、狩猟当日に向けてあらかじめリサーチできる能力も必要です。
山道は通常より体力を使うため、体力がないと、せっかくの獲物を逃してしまうことにもなりかねません。
狩猟は、 わなを仕掛けるのに手先の器用さが必要だったり、じっと獲物を待つ集中力が必要や、ただ鳥獣を狩るだけではなく、周りの状況を見て的確な判断がくだせる能力も必要です。
必ず、すべての項目に当てはまらないといけないわけではありません。参考程度にチェックしておきましょう。
猟師の求人はある?就職先や活動場所を紹介

猟師の就職先は、市役所やジビエ加工会社、害虫駆除会社などがあります。募集要項には、わなの免許を持っている人の求人が多めです。
また、鳥獣駆除を仕事の1つとしている人もいます。
鳥獣駆除は都道府県が猟友会に依頼することが多いですが、有害鳥獣地域駆除隊を独自で募集していることもあります。
参考:熊本市
安定した収入を希望する場合は、猟師メインではなく、仕事の一環として狩猟に携われる就職先を選ぶとよいでしょう。
猟師の平均年収を公開!専業でも生活できる?
求人で猟師を検索すると、わなの猟師免許を取得して一般企業に就職している人の平均月給は17万円~23万円ほど。年収にすると、ボーナスを抜いて204万円~276万円ほどになります。
猟師の仕事は、鳥獣駆除やジビエ販売、角や皮などを加工して収入を得る方法もあります。
下記は、いわき市で捕獲したイノシシ1頭あたりの鳥獣駆除の報奨金の例です。
成獣 | 幼獣 | |
鳥獣捕獲等許可を所持 ※別途、鳥獣被害防止対策協議会より交付金あり |
12,000円 ※最大8,000円が交付 |
12,000円 ※最大1,000円が交付 |
猟師 | 20,000円 | 13,000円 |
参考:いわき市市役所
仮に、鳥獣捕獲等許可を得て毎日イノシシの幼獣1頭を捕獲した場合、1ヶ月の給料は39万円ほど。
鳥獣捕獲は長期的に狩猟できるため、1年間毎日1頭ずつ捕獲すると年収468万円ほどになります。ですが、捕獲対象頭数に限りがありますし、毎日捕獲できる確証はありません。
そのため、猟師を専業にする場合は安定しづらい職業と言えるでしょう。
猟師を専業にする場合、1年目から生活を維持するのは難しいです。
とはいえ、ジビエ販売やレストランなどの横展開が行えるよう人脈を広げていくと、専業も夢ではありません。
まずは、技術を磨き人脈を広げ、周りの狩猟仲間や先輩に話を聞いてから専業になるか考えるとよいでしょう。
猟師の将来性はある?
引用:農林水産省
2019年(令和元年)の野生鳥獣による農作物の被害は158億円。
被害額は年々減少しているように見えますが、鳥獣の推定個体数は1989年~2017年の29年間で鹿は約9倍、猪は約3.5倍に増加しています。
猟師は、鳥獣被害を抑えるため、必要不可欠な仕事です。
引用:環境省
ですが、猟師は年々高齢化が進んでおり、60歳以上の人の割合は全体の65%を占めています。狩猟免許を新規で取得する人も増えていますが、まだまだ鳥獣被害の減少には及びません。
被害が多くなると、農作物を作る意欲が低下したり田畑を手放したりする人も増えていき、地域が衰退していく恐れもあります。
都道府県のなかには、被害を少しでも抑えようと、狩猟免許の資格取得をサポートする市区町村もあります。
参考:長野県 山形村役場
鳥獣被害は、農作物の流通が減ったり森林被害など自然の生態系にも影響を及ぼしたりするほど深刻な問題です。人が危害を受ける場合もあります。
被害を重くみた国は、2015年の改正鳥獣保護法で、環境省が捕獲の専門事業者を認定する認定事業者制度を創設しました。
2020年度には、2023年までに鳥獣捕獲数を20万頭増やす対策を行う「集中捕獲キャンペーン」を農林水産省が実施しています。
参考:農林水産省
また、鳥獣保護防止対策とジビエ利活用推進に予算枠概要決定額が組まれるほど、国は鳥獣被害を重要視しています。
参考:農林水産省
以上のことから、国が一丸となって鳥獣対策を行っているため、鳥獣駆除をする猟師の仕事がなくなる可能性は低いでしょう。
まとめ:猟師は農作物や地元民を守る大切な仕事

猟師の仕事は、農作物や人を鳥獣から人々を守る誇れる仕事です。自然環境の保護も同時に行えます。
狩猟は動物を殺める仕事ですが、その分、動物の命の大切さをより深く知る仕事でもあります。
実際に「狩りをして自給自足で生活をすると、食卓に並ぶ食べ物のありがたみをより感じられるようになった」と言われている猟師もいました。
「農作物を鳥獣から守りたい」「人里に下りてきた鳥獣から人々を守りたい」「山や森林などの自然環境を保護したい」など感じた人は、猟師に向いているかもしれません。
ジビエを好きなときにいつでも食べたいという人や、ジビエをもっと広めたいという人にも向いているでしょう。
無料で請求できるTCA東京ECO動物海洋専門学校の資料には、「野生動物保護専攻」の学習内容やイベント、企業とのコラボ企画など、ホームページでは伝えきれない内容も盛り込まれています。また、「動物園・動物飼育専攻」では、野生動物に関する動物学概論を学ぶこともできます。
取り寄せた資料をチェックして、気になる職業、将来なりたい職業の1つとして考えてみてください。