神戸どうぶつ王国 園長 佐藤哲也さん × 神戸どうぶつ王国  木村雪乃さん
 田中秀太さん

オリがない!目の前でナチュラルな姿の動物と、
花と緑が楽しい動物園

動物との距離が近く、ふれあいが楽しめると人気の「神戸どうぶつ王国」。
今回は、日々ステップアップする卒業生たちの様子をご紹介。本校卒業生の木村雪乃さんと
田中秀太さん、そして園長の佐藤哲也さんにお話を伺いました。

神戸どうぶつ王国 飼育スタッフ

木村 雪乃さん

動物園公務員専攻卒業

神戸どうぶつ王国 飼育スタッフ

木村 雪乃さん

動物園公務員専攻卒業

神戸どうぶつ王国 飼育スタッフ

田中 秀太さん

動物園・動物飼育専攻卒業

神戸どうぶつ王国 飼育スタッフ

田中 秀太さん

動物園・動物飼育専攻卒業

目の前で、動物たちの自然な様子を楽しんでほしい

ランドスケープ※を大切にする神戸どうぶつ王国には、動物を囲うオリがありません。動物は本来生息する環境で生きるべきで、オリは、あってはならないもの。やむを得ない場合だけ、ガラスで仕切ります。そして植栽も大事です。生息域と同じような植栽や水辺、岩石などを配置して、正しいランドスケープ※を考えて創り出しています。 実は以前からあった考え方でしたが、最近になってさまざまな動物園で実施されるようになりました。当園の場合は、さらに発展させて動物の行動に合った場を作っています。

私はバクを担当していますが、当園にはアメリカバクとマレーバクがいます。同じバクでも、アメリカバクは平地に生息するためか、高低差を嫌います。だからお客様との間に仕切りを作らない代わりに段差を設けて、バクがお客様に近づき過ぎないように工夫しています。お客様は、目の前でバクの肌の質感が楽しめます。それに対してマレーバクは、平地や山を移動する習性があり、高低差も気にしないので、お客様との間にガラスの仕切りを設けています。その中で、彼らが自由に広く動き回れる環境を整えています。

私は鳥を担当しています。お客様にただ見ていただくだけでなく、目玉は私たちの行うバードパフォーマンス。大型でカラフルなインコが空を飛び、ハヤブサが滑空するダイナミックな様子を楽しんでいただきます。

僕は、いつも君たちに提案を求めているよね。そのような提案から、現在姉妹園である那須どうぶつ王国ではジェンツーペンギンを野生のように走らせる計画が進んでいます。でも実は提案があっても却下することが多いですね。それはたいていの提案が、どうしても既成概念にとらわれたものだから。どこかの動物園のマネだったり、どこかにあったアイデアの延長であったりするんだよね。

ハシビロコウ生態園にキタベニハチクイを共生させるアイデアは、佐藤園長からでした。

じっと動かずにたたずんでいるハシビロコウの頭上を、群れになったキタベニハチクイが猛スピードで飛び回る様子は、作る前から僕の頭の中でイメージできていたのです。担当者は、実際にその様子を見て「こんな風に飛ぶんだ」って目を丸くしていましたけどね。 恐らくこれがより自然に近い風景なのだろうし、お客様も、動かないハシビロコウと活発なキタベニハチクイを見て喜んでいますよ。

動物のトレーニングより
むずかしい、人の育成

田中さんも木村さんも、当園に実によく貢献してくれています。田中さんは、神戸どうぶつ王国に来て3年になるね。でもその前に他の園で働いていた経験があって、トータルで10年のベテランです。木村さんは最初からここに来て、今年で4年目になるかな。

はい。鳥の担当で、パフォーマーとなって2年半になります。

私は鳥やバク、スナネコなども担当しています。

二人ともバードパフォーマーですが、特に今は木村さんがメインになってパフォーマーのメンバーを引っ張っています。木村さんにはさらにスキルを伸ばしてもらい、トレーナーとして後輩の育成にあたってほしいと思っています。木村さんは、沖縄にある他の園のスタッフを指導した経験もありますね。

それまで教わる立場だったのが、初めてトレーナーとして指導にあたらせていただきました。教わるより、教える方が何倍も大変だと思い知りました。佐藤園長はいつも私に優しく教えてくださるのに、なぜ私は怒ってしまうんだろうと、何度も落ち込みました。

大変だったね。ほとんど知らないスタッフに対する指導だから、責任も重大です。しかも決められた期限内に、きちっと指導を行わなければいけません。しかし、それが依頼された私たちの責任でもあります。

私も後輩の指導経験があります。きちんと伝えているつもりでも、相手にまったく伝わっていないし、思い通りに成長してもらうのは本当に難しい。もどかしくて、自分でやった方が早いと思うこともしばしばです。しかし佐藤園長も、こうした歯がゆさを、自分たちに対して感じていると思います。人を教えることの難しさと実感しています。

指導と言えば以前沖縄で鳥の状態をチェックしてもらおうと飛ばした後、「今のはどうですか?!」と振り向いたら、双眼鏡でヤンバルクイナの野鳥を追っていたことがあったんですよ!

大丈夫、見ていますよ(笑)。見ているけど、僕はパッと見て鳥に何か問題があればすぐわかるんです。だから「この鳥は問題ないから、次の鳥を見よう」ってその間にね……。しかし木村さんは小さかった声が、沖縄から戻ったらしっかりお腹から出ている。すごい成長です。良い経験になったでしょう。

木村さんは、説明がとても上手です。後輩にもきちんと理由を伝え、説明して理解してもらっています。きっと沖縄での経験が生きているのだと思います。

教えるようになってから、鳥を飛ばすのがさらに楽しくなりました。また、以前は佐藤園長に言われたことを鵜呑みにしていたのですが、今はその言葉の裏にある理由や理論を考えるようになりました。

すべてに理屈があります。それを体感として理解できたのではないかな。うれしいことです。

一羽一羽すべてを
管理する理由

私たちの朝は、佐藤園長への電話報告から始まります。神戸どうぶつ王国はもちろん、佐藤園長が指導なさっている動物園や水族館、植物園など全国8カ所から一斉に連絡があるはずですが、佐藤園長は一羽一羽を把握して、的確に指示を出されますね。

全部で60羽の状態を把握しています。フライトウエイトと言いますが、パフォーマンスで鳥を飛ばすためには、必ず体重を調整しなければなりません。その調整も、飼育している鳥とパフォーマンス訓練にある鳥とは、出す指示がまったく違う。今の体重や状態、反応などの報告を受けたら、今日のエサをグラム単位で指示します。しかも今日だけを見据えるのではなく、例えば訓練中の鳥でデビューの日にピークの状態にしたいなら、逆算して、ピークに持っていけるようエサの量を調整します。一羽一羽の細かい調整が、毎日必要です。それを、早く君たちに任せられたら良いんだけどね。

まだまだですが、頑張ります。日々のフライトウエイトのチェックは、健康管理ではなく、いかに鳥のパフォーマンスを最大限にするかが目的ですよね。

そもそも鳥は、空を自由に飛べる動物です。そんな鳥が、飛び立ってもまたパフォーマーの元に戻って来るのはなぜか。信頼関係ではありません。私たちはせいぜい、止まり慣れた木にすぎないのです。彼らは基本的に、狩りをしたい動物。だからまず狩りに適したウエイトを保たせ、その狩りをする場所の条件付けをしっかり行うことで、彼らは大空から必ず戻ってくるのです。

でもそうした行動も、実は鳥によって全く違うんですよね。だからトレーニング内容も一羽一羽違います。

もしエサを与え過ぎると、鳥はうまく飛んでくれません。「こんな風が吹いているけれど、負けずにあそこまで飛んでいってご飯を食べるぞ」というモチベーションで飛べるよう、私たちが管理してやらなければならないのです。

でもそうした行動も、実は鳥によって全く違うんですよね。だからトレーニング内容も一羽一羽違います。

もしエサを与え過ぎると、鳥はうまく飛んでくれません。「こんな風が吹いているけれど、負けずにあそこまで飛んでいってご飯を食べるぞ」というモチベーションで飛べるよう、私たちが管理してやらなければならないのです。

絶滅から守ることの価値と、
責任を担う

田中さんにはさまざまな動物を担当してもらっています。今後はSDGs活動や人の育成など、園としての仕事を担う中堅幹部に育ってもらえるよう期待しています。今は、アマミトゲネズミの飼育という大変責任のある仕事をしていますね。

日本固有の野生のトゲネズミですね。国内希少野生動植物種及び国の天然記念物に指定されている絶滅危惧種です。その名の通り奄美大島にしか生息しないアマミトゲネズミですが、森林伐採をはじめとした生育環境の変化や、外来生物の影響で激減しているので、当園が環境省と日本動物園水族館協会と協力して2年前から飼育を始めています。

何十年も試みてきた繁殖に、たしか宮崎県が3年前、世界で初めて成功しましたね。

そうです。昨年初めて当園でも繁殖に成功して、今年もうまく繁殖させることができました。 もともと国と、資金の潤沢な公立の動物園とがやるようなプロジェクトなのですが、民間では初めて佐藤園長が「やろう」と手を上げ、当園がメインで任せてもらえることになり、そこに私も参加することになったという経緯があります。繁殖に成功したのは、佐藤園長の力によるところが大きいと思っています。他の園では行っていないような発想で、繁殖できるようエサを工夫し行動量を増やしてきたからです。

田中さんが行っているのは、生息域外保全というものですね。本来の生息地で保護することが難しい生き物を、当園のような施設に保護し、繁殖させます。これがうまくいくということは、つまり、その種を絶滅から救うことができることを意味します。その非常に大きな歯車に、当園がなれるという大変責任のある仕事なのですよ。
ただこの話が来たとき、田中さんはそういう種類の生物がいることを知らなかったね?

はい。知りませんでしたし、その価値すらわかりませんでした。

だから当時、こんこんと説明したね。「アマミトゲネズミは日本の財産なのだから、逃がしたり、死なせたりしたら重大なことだぞ」って。このプロジェクトに取り組めることの意味を考えようとね。

それまでネズミにあまり関心がなく、最初はなかなか愛着も湧かなかったのですが、接しているうちに興味が湧いてきました。そして佐藤園長の助言はとても複雑で、しかも先の先までしっかり考えられています。それに触れるだけでも刺激的で、がぜん面白くなりましたね。まずは一からネズミを勉強し、アカネズミを生かし繁殖させて、それから国の承認をもらいアマミトゲネズミを導入しました。

今度、やはり絶滅危惧種のミヤコカナヘビも保護するのですが、田中さんは「やりたい」と手を挙げてくれたね。希少生物を扱う面白さに気づいてくれたんですね。
繁殖といえば、ハシビロコウの繁殖にも取り組んでいますが、現在繁殖期が終わり、次の繁殖期を待っているところです。降雨ができ、池の水位も変えられる施設内で、行動量を計測して、発情と行動の相関関係をみています。並行してホルモン研究も行っていますよ。
ただ飼育下繁殖が極めて難しく、米国で1例、欧州で1例とわずかな記録しかありません。当然簡単ではありませんが、今は昔のように動物を簡単に入れられる時代ではないのです。だから、自分たちが持っている資源を有効に活用しなければなりません。そう考えれば、動物を増やすとか繁殖させる価値が、より深く理解できると思います。

ECOでは、人間の基礎力をつけてほしい

お二人は、なぜこの道に進もうと思ったの?

動物が好きだったのですが、ペットを飼ったことがありませんでした。だから将来は、動物に触れる仕事がしたいと思いました。

私は親が動物好きだったので、自分も自然と好きになりました。

生き物が好きなことは基本ですね。そして具体的な技術は、現場で身につけてもらえれば良いです。就職をする時は、そこで自分たちがやるべき内容というのがありますから、それを理解することですね。資質として動物に対する好奇心や探求心、ホスピタリティは欠かせません。さらに私たちの場合はパフォーマンスを行っているので、それに対する理解も必要です。トレーニングの理論や技術を身につけたいと思ってもらえないと、いくらこちらが教えても、成長が難しいですからね。

この仕事をやっていて良かったと思うことはたくさんあります。以前、バードパフォーマンス終了後に駆け寄って来てくれた子どもさんが「お父さん、鳥が嫌いだったのに好きになったんだって!」とうれしそうに教えてくれました。大人の心を動かせる仕事は、そうありません。動物が好きになるきっかけを作ることができるこの仕事に、誇りを持っています。

神戸どうぶつ王国

〒650-0047 兵庫県神戸市中央区港島南町7-1-9 
TEL078-302-8899

「花と動物と人とのふれあい共生」をテーマに、広大なグラスハウスと開放的な屋外エリアに、年間通して1,000種類、10,000株のさまざまな花々が咲き誇り、150種800頭羽の動物たちが共存する動植物園。
アルパカ・カピバラ等の人気動物とのふれあいや、動物の身体能力や知能の高さを間近で見ていただけるバードパフォーマンスやドッグパフォーマンスなどを通して楽しく学べる(EDUTAINMENTエデュテイメント)施設です。

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