馬はどんな動物?寿命や知能はどれくらい?蹄の役割や仕組みを解説
2025.10.03
馬は昔から人と深く関わってきた動物です。大きく引き締まった体を持ち、広い視野や鋭い嗅覚といった感覚にも優れています。また、長い寿命や学習能力などの点でも独自の特性があり、蹄や蹄鉄の仕組みには馬ならではの役割があります。
本記事では、馬の基礎知識から体の特徴、品種、寿命や成長、知能、そして蹄や蹄鉄の大切さまでをわかりやすく紹介します。
馬の基礎知識

馬という動物を理解するために、まずはその分類や人との関わりの歴史を見ていきましょう。
馬の分類
馬は「哺乳類」に分類され、その中でも「奇蹄目(きていもく)」という、足の指が奇数本であるグループに属します。さらに「ウマ科」の動物であり、シマウマやロバも同じ仲間です。見た目や暮らし方は異なりますが、いずれも足の指が奇数本という共通点があり、馬はその中でも真ん中の1本の指で体を支えるのが特徴です。
人との関わりの歴史
馬は古代から人間と共に暮らしてきました。農耕や荷物の運搬に利用されただけでなく、戦の場面でも大きな力を発揮してきました。たとえば、戦国時代の日本では騎馬武者が活躍し、ヨーロッパでも騎士の戦いや騎馬軍団の移動に欠かせない存在でした。
その役割は時代とともに変化し、現代では競馬や乗馬といったスポーツ、観光や文化活動の中で活躍しています。長い歴史を通じて、馬は常に人の暮らしを支える存在であり続けてきたのです。
馬の体の特徴

馬の体は大きく力強いだけでなく、速く走るための骨格や筋肉、周囲を敏感に察知する感覚器官など、独自の特性を備えています。これらの特徴を理解することで、馬がなぜ人とともに働き、さまざまな場面で活躍してきたのかが見えてきます。
ここでは、体の大きさや感覚の特徴について詳しく紹介します。
身体の大きさ、体重、足の構造
馬の大きさは種類によって幅広く分類されます。体のサイズや体重に応じて「軽種」「中間種」「重種」「ポニー種」に分けられます。
| 区分 | 特徴 | 代表的な品種 |
|---|---|---|
| 軽種(けいしゅ) | 体高は約140〜170cm、体重は400〜500kg程度。脚が細長く、スピードと持久力に優れる。 | サラブレッド、アラブ馬など |
| 中間種 | 体高は約140〜160cm、体重は400〜450kg程度。軽種と重種の中間的な体格を持ち、多用途で飼育される。 | セルフランセ、クォーターホースなど |
| 重種(じゅうしゅ) | 体高は150〜180cm以上、体重は800〜1,000kgを超える。筋肉質で力強く、農耕や荷物の運搬に適している。 | ペルシュロン、ブルトンなど |
| ポニー種 | 体高が147cm以下の小型種の総称。体は小さいが丈夫で、子どもの乗馬やペットとして親しまれる。 | シェトランドポニー、ウェルシュポニーなど |
馬の足は細長く華奢に見えますが、内部には強靭な骨と腱が集まっており、速く長く走ることに適した構造をしています。体の重さを効率良く支え、衝撃を和らげる仕組みを持っているため、サラブレッドのように時速60km以上で走ることもできます。
視力・聴力・嗅覚の特徴
馬は視覚・聴覚・嗅覚といった感覚がとても発達しており、野生で生き残るためや仲間との生活に大きく役立ってきました。
ここでは、それぞれの特徴を見ていきましょう。
視力
馬の視野は非常に広く、330〜350度ほど見渡すことができます。左右の目を別々に使う「単眼視」と、両目で同じ方向を見る「両眼視」を切り替えられるのも特徴です。ただし、正面と真後ろには死角があり、突然そこから近づくと驚いてしまうことがあります。
聴力
馬の耳は大きく、さらに左右を自在に動かすことができます。音の方向をすばやく探ることができるため、周囲の状況を敏感に察知できます。耳の向きや動きには気持ちが表れることもあり、馬の感情を知る手がかりになります。
嗅覚
馬の鼻は非常に優れた嗅覚を持っており、仲間の識別や人の判別、さらには危険の察知に役立ちます。群れで生活する馬にとって、においは安心感や信頼関係を築く大切な要素です。
馬の品種

世界には200種類以上の馬の品種が存在するといわれています。その中でも特によく知られている品種には、見た目や性格、活躍する分野に特徴があります。
代表的な品種と特徴
代表的な品種ごとに、見た目や性格、活躍する分野の違いを見てみましょう。
| 品種名 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| サラブレッド | 体がスリムで脚が長い。瞬発力とスピードに優れる。 | 競馬、障害飛越、乗馬 |
| アラブ馬 | 頭が小さく顔立ちが整っている。持久力が高く、性格は賢く温厚。 | 長距離競技、改良種の基礎 |
| クォーターホース | 筋肉質で瞬発力が高い。方向転換や加速が得意。 | 牧畜作業、ウエスタン競技 |
| シェトランドポニー | ポニーのなかでも小型の品種。丈夫で力強い。 | 子どもの乗馬、ペット |
| ペルシュロン | 大型で筋肉質。力が強く落ち着いた性格。 | 農耕、荷車の牽引 |
このように品種ごとに体格や能力が異なり、それぞれに適した役割を持っています。
馬の寿命と成長

馬がどのくらい生きるのか、また成長のスピードはどの程度なのかを知ることは、馬の生活や飼育を理解するうえで大切です。
ここでは、寿命と成長の特徴について見ていきます。
寿命
馬の平均寿命は20〜30年程度とされています。飼育環境や健康管理の良し悪しによって差があり、牧場や家庭で大切に育てられた馬の中には30年以上生きる例もあります。
馬の年齢と成長スピード
子馬は生まれたときにすでに50〜60kgほどの体重があり、5〜6ヵ月の離乳期には約250kgにまで成長します。成長スピードは人間と比べると非常に速く、3歳までは人間の6倍のペースで歳を重ねるといわれます。その後はやや落ち着き、4歳以降は人間の3倍のスピードで年齢を重ねると考えられています。
また、馬の年齢は歯の本数や摩耗の状態から判断できるため、見た目ではわからない場合でもある程度推測が可能です。
馬の知能

馬は温厚な性格で知られていますが、その行動の背景には高い知能があります。記憶力や学習能力に優れており、人や環境をよく覚えることができます。
たとえば、一度通った道や世話をしてくれる人の顔を長く記憶できるとされます。また、訓練によって新しい動きを覚えることが可能で、競技や作業でもその力が発揮されます。
さらに、馬は表情やしぐさで感情を表すことができ、人とのコミュニケーションを築くことにも長けています。信頼関係を持って接すれば、知能の高さを感じられる場面は多くあります。実際に競馬や障害飛越といったスポーツではコースを覚えて走り、牧畜や農耕では人の指示にしたがって作業を行います。また、セラピー活動に参加して人に安心感を与えるなど、その知能はさまざまな場面で活かされています。
蹄(ひづめ)の役割と仕組み

馬の蹄は、体を支えて走るうえで欠かせない大切な部分です。硬い殻のように見えますが、内部には衝撃を吸収する仕組みがあり、馬が速く長く走れるようになっています。
蹄(ひづめ)とは何?役割について
蹄とは、足の先が進化して一本の指になった部分です。外側は硬い角質でできており、地面からの衝撃を受け止め、体重を支える役割を果たしています。
蹄の仕組み
蹄は人の爪と同じ「ケラチン」という物質でできています。放っておくと伸び続けるため、自然環境で暮らす馬は歩き回ることで削れますが、飼育されている馬は人が削って整える必要があります。蹄の内部には「カエル」と呼ばれる弾力のある部分があり、地面を踏むたびにクッションのように衝撃を吸収し、同時に血液の循環を助ける役割も果たしています。
蹄のケアと重要性
蹄は割れたり病気になったりすることがあるため、定期的なケアが欠かせません。削蹄や清掃を行うことで、馬は健康に走り続けることができます。蹄の手入れは馬の健康管理の基本であり、長く活躍するための大切な習慣です。
蹄鉄(ていてつ)の役割

蹄鉄は、馬の蹄を守るために取り付けられる金属製の保護具です。U字型をしており、鉄やアルミニウムで作られるのが一般的です。
蹄鉄は蹄に直接釘で打ち付けますが、取り付ける部分には神経が通っていないため、馬が痛みを感じることはありません。蹄鉄をつけることで、硬い地面や長距離の移動でも蹄が削れすぎず、衝撃から足を守ることができます。
ただし、野生で暮らす馬は広い範囲を移動する中で蹄が自然に削れていくため、蹄鉄を必要としません。蹄鉄が必要なのは、人に飼育されて舗装路や硬い地面を歩く機会が多い馬や、競走・作業で負担がかかる馬が中心です。
競走馬や作業馬では、蹄鉄の形や素材を工夫することで走りやすさや作業効率を高めることもあります。蹄鉄は馬の健康とパフォーマンスを支える大切な道具といえます。
また、馬の蹄や脚を専門に管理する仕事をする人を「装蹄師(そうていし)」といい、蹄の手入れや蹄鉄の取り付けを行う専門職です。このほかにも、馬と関わるお仕事の例として、動物全般のお世話をする飼育員や牧場スタッフ、競走馬を専門にお世話し食事や運動を管理する厩務員など、さまざまな職種があります。
装蹄師や厩務員の仕事内容やキャリアについては以下の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:装蹄師とはどのような仕事?仕事内容や年収、主な就職先を解説
関連記事:厩務員(きゅうむいん)になる方法!必要な資格は?仕事内容も紹介!
まとめ|馬についての基礎知識を知って、理解を深めよう

馬は昔から人と共に暮らし、農耕や運搬、スポーツや文化活動などさまざまな場面で活躍してきました。大きな体の特徴や優れた感覚、寿命や知能の高さ、さらに蹄や蹄鉄といった特有の仕組みを知ることで、馬という動物の奥深さを理解できます。
本記事で紹介した基礎知識を踏まえると、馬がなぜ人にとって特別な存在であり続けているのかが見えてきます。もし興味を持ったら、牧場や乗馬体験などで実際に馬とふれあってみてください。教科書や画面で見るのとは違う迫力や温かさを感じられるでしょう。