博物館に行くのが好きで、展示を見るたびにワクワクする。そんな気持ちから、「いつか自分も博物館で働いてみたい」と思う人も多いでしょう。
実際に博物館で働くには、どのような仕事があるのか、どんな資格やスキルが求められるのかなど、事前に知っておきたいことがいくつかあります。
この記事では、博物館スタッフの仕事内容や必要な資格、年収の目安まで詳しく解説します。博物館で働くことに興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
記事の概要
博物館スタッフになるには資格が必要?
博物館で働くために必要な資格は、職種によって異なります。特に「学芸員」として働く場合は、学芸員資格が必須です。
学芸員資格を得るためには、大学で文部科学省が定める博物館関連科目の単位を修得し、学士の学位を取得することが一般的なルートです。
また、学芸員として働く場合以外にも、以下のような資格があると採用や業務に役立つでしょう。
資格名 | 採用・業務で役立つポイント |
---|---|
司書資格 | 資料の分類・整理・目録作成など、博物館資料の管理や調査研究に共通するスキルがあるため。文献管理や展示資料の裏付け調査にも有用。 |
英語検定・TOEIC | 外国人来館者対応、海外との資料貸借・共同研究、英文資料の読解・翻訳など国際業務に対応できる力を示せる。 |
博物館検定 | 博物館全般に関する基礎知識を持っていることを証明でき、学芸員志望者の熱意や意欲のアピール材料になる。 |
美術検定 | 美術館勤務や美術資料の取り扱いに強みを持てる。作品解説や展示構成、専門分野の深掘りに役立つ。 |
文化財取扱技術者 | 文化財の取り扱いや保存に関する知識・技能があり、博物館での資料保存・展示作業に直接活かせる。特に歴史系・考古系の博物館で有利。 |
防火管理者 | 展示室や収蔵庫の安全管理に関する知識を持つことで、施設運営における危機管理能力を評価されやすい。防災訓練の企画・実施にも対応可能。 |
博物館スタッフの仕事内容|職種別の詳細解説
博物館スタッフの仕事内容は職種によって大きく異なります。主要な職種ごとの具体的な業務内容を詳しく見ていきましょう。
学芸員
学芸員は博物館の中核を担う専門職で、展示物の調査・研究・保存・展示を行います。主な業務内容は以下のとおりです。
- 展示品の選定、購入、寄贈受付、台帳管理
- 展示品に関する学術研究、論文執筆
- 企画展・特別展の立案、展示レイアウト設計
- 展示品の適切な保管と必要に応じた修復作業
- 講演会やワークショップの企画・実施
- 図録やパンフレット、研究紀要の制作
学芸員は担当する分野(考古学、美術史、自然科学など)の専門家として、その知識を活かして展示品の価値を最大限に引き出す仕事をしています。また、他の博物館や研究機関との連携も重要な役割です。
受付・案内スタッフ
受付・案内スタッフは博物館の「顔」として、来館者が最初に接する重要なポジションです。丁寧な対応と正確な情報提供が求められます。
主な業務内容には以下が含まれます。
- チケット販売と入場管理
- 館内案内と展示に関する基本的な説明
- パンフレットやオーディオガイドの貸出
- 来館者からの問い合わせ対応
- 団体予約の受付と案内
- 迷子や落し物の対応
受付・案内スタッフはコミュニケーション能力とホスピタリティが特に重視される職種です。アルバイトや契約社員として採用されることも多く、未経験からでも始めやすい仕事です。
解説員・ガイド
解説員やガイドは展示内容について来館者に説明する役割を担います。展示物に関する知識だけでなく、わかりやすく伝える技術も重要です。
一般的な業務内容は以下のとおりです。
- ガイドツアーの実施
- 展示物についての質問対応
- 体験コーナーでの指導・補助
- 外国語での案内(施設による)
- 子ども向けプログラムの実施
特に地域の歴史博物館や科学博物館では、展示の背景にある興味深い話を交えながら案内することで、来館者の理解と関心を深める役割を果たしています。
博物館スタッフの年収・待遇
博物館スタッフの給与や待遇は、職種や勤務先、雇用形態によってさまざまです。やりがいのある仕事である一方で、働き方や収入の違いについてもしっかりと理解しておくことが大切です。
ここでは、博物館のなかでも専門職である「学芸員」にしぼって、年収や待遇、将来のキャリアについて紹介します。
年収や待遇
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、学芸員の年収は約551.4万円とされています。ただし近年は非正規雇用が増加していて、勤務形態によって収入や待遇に差が出るケースも少なくありません。
契約職員や非常勤の場合は月給・年収ともに低めに設定される傾向があります。将来を見据えるうえで、雇用形態の違いにも注意が必要です。
参考:学芸員 – 職業詳細 | job tag【職業情報提供サイト(日本版O-NET)】
将来のキャリア
学芸員は、展示や研究、教育活動などを通じて、専門知識を活かしながら長く活躍できる専門職です。働きながら経験を積んでいくことで、より責任のあるポジションにステップアップしていくことも可能です。
たとえば、学芸員の仕事に慣れてくると、他の学芸員をまとめる「主任学芸員」と呼ばれる立場を任されることがあります。その後、展示や研究の全体的な方針を考える「学芸課長」、さらには博物館全体の運営を担う「副館長」や「館長」といった役職を目指すこともできます。
このように、学芸員は「調べる仕事」だけでなく、「博物館を動かしていく立場」にも進んでいける仕事です。
また、来館者に向けて展示の内容をわかりやすく伝えたり、子ども向けのワークショップを行ったりする機会も多くあります。研究だけでなく、人との関わりや社会とのつながりを大切にできる人ほど、長く活躍できる職業といえるでしょう。
博物館スタッフのやりがいと魅力
博物館スタッフとして働くことのやりがいは、単に資料や展示物に触れるだけではありません。
特に学芸員の場合、自分が長年学び続けてきた分野を仕事に活かし、貴重な資料や作品と日常的に接することができる点に大きな魅力があります。日々新しい知識や発見に出会いながら、専門性を深めていける環境は、知的好奇心を持つ人にとって非常に満足度の高いものです。
一般職の場合でも、来館者の体験をより良いものにするために直接貢献できる点にやりがいを感じる人が多いです。例えば、丁寧な案内や親切な接客によって来館者の満足度を高めたり、快適な館内環境を維持することで安心して展示を楽しんでもらえたりと、日々の小さな積み重ねが博物館全体の評価や信頼につながります。
活躍する卒業生にインタビュー
TCA東京ECO動物海洋専門学校を卒業し、現在は久慈琥珀博物館で博物館職員として働く卒業生の声をご紹介します。
私は絶対に恐竜に関わる仕事をしたいと思っていたので、在学中は春や夏に大学との調査に参加しました。恐竜の歯を見つけた時はすぐに「これは歯だ」と気づき、大学の先生にも見てもらったところ「これは恐竜だ」となり、記者会見になりました。10分ほどは実感が湧きませんでしたが、周囲がざわついてきて、ようやく自分がとんでもないことをしたのだとじわじわと感じてきました。
最後は、本当に恐竜が好きな人が自分の好きな場所に行けると思うので、恐竜が好きという気持ちを捨てなければ、きっとどこまでも行けると思います。みなさんも頑張ってください。
「好き」という気持ちを原動力に、夢を叶えた今も、来館者の発見や感動を間近で支える日々にやりがいを感じていると語っていただきました。
博物館スタッフに向いている人の特徴
博物館スタッフに向いている人の特徴は、以下のとおりです。
- 知的好奇心が旺盛で学び続けることを楽しめる
- 細部に注意を払う丁寧さがある
- 来館者とのコミュニケーションを楽しめる
- 長時間立ち仕事ができる体力がある
- 静かな環境で集中して作業できる
このように、博物館スタッフに向いている人は、知的好奇心や探究心が強く、コミュニケーション能力や几帳面さ、柔軟な対応力を持ち合わせている方です。これらの資質は、学芸員だけでなく、博物館で働くすべての職種で活かすことができます。
自分の強みや興味を活かしながら、博物館という文化を支える現場で活躍したいと考えている方には、非常に魅力的な職場といえるでしょう。
博物館スタッフに関するよくある質問
ここでは、博物館スタッフを目指す方が疑問に感じやすいポイントをQ&A形式でまとめました。
博物館スタッフになるために最適な学部・学科はありますか?
学芸員を目指す場合は、担当したい分野に関連する学部・学科(歴史学科、美術史学科、考古学科、自然科学系学科など)で専門知識を深めつつ、学芸員資格を取得するのが理想的です。一般スタッフの場合は特定の学部・学科は必須ではありませんが、文化や芸術に関する基礎知識があると有利です。
未経験から博物館スタッフになることは可能ですか?
受付・案内、ショップスタッフなどは未経験からでも採用されることが多いです。学芸員については、専門的な知識と資格が必要なため、まったくの未経験からいきなり正規採用されることは難しい傾向にあります。ボランティアやインターンから始めるのもひとつの方法です。
地方と都市部では求人状況に違いがありますか?
都市部は施設数が多く求人数も多いですが、競争率も高くなります。地方は求人数は少ないものの、競争率が比較的低いケースもあります。特に地方創生の一環として新設される施設では、一定数の採用が見込めることもあります。
まとめ
博物館スタッフとして働くためには、学芸員資格が必要な職種から、受付やショップスタッフなど未経験から挑戦できる仕事まで多様な道があります。博物館は文化や自然、歴史を伝える大切な場所であり、スタッフ一人ひとりが来館者の学びや感動を支えています。あなたも、自分の「好き」を活かして博物館の現場で活躍する未来を目指してみませんか。
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